誉田哲也の連作短編「ヒトリシズカ」

誉田哲也の最新文庫「ヒトリシズカ」です。著者には珍しく短編、しかも最近流行の連作短編です。誉田哲也らしいスピード感で一気に読めます。

本書は、あなたに新しい興奮をもたらす。それは、第一章「闇一重」で幕を開ける。男が拳銃で撃たれて死亡する。犯人逮捕が間近となった矢先、司法解剖をした法医学者から連絡が入る。心臓に達していた銃弾は、一度止まってからまた動いたというのだ―。第二章 「蛍蜘蛛」で驚愕、第四章「罪時雨」で唖然、最終章「独静加」で…何を見る?―。(アマゾンより)

シズカとは登場する主人公の女の子です。短編最後のタイトルがヒトリシズカとなっています。
さすが誉田哲也、圧倒的なスピード感でグイグイ読み進められます。しかも短編なので余計に読みやすい。
シズカが糸を引いてるであろう事件がおぼろげにみえて気ながら、生い立ちもからみつつ話は進みます。
誉田哲也の真骨頂であるグロさはあまり出て来ません(笑)。
そして最後の結末も結構キレイな結末で終わってます。
ただ、確かに消化不良ではあります。なぜならシズカをそこまでかき立てるものがあまり書かれていない。
これはこれとして僕は好きな終わり方でした。永遠の謎もあってもいいかもしれません。誉田哲也の新たな作風の一作といえるでしょう。
文庫で買うならオススメです。

読みやすさ度 ★★★★
ビックリ度  ★★★
お買い得度  ★★★



ヒトリシズカ



悲しいかな途中挫折・・「高原のフーダニット」

有栖川有栖さんは大好きで読み続けてきた作家さんの一人ですが、最近急速に魅力を感じなくなりつつあります。
早速の新刊という事で期待して読んだ「高原のフーダニット」です。

「オノコロ島ラプソディ」容疑者には鉄壁のアリバイ。国産み神話の淡路島で、火村を待ち受ける奇天烈な事件。「ミステリ夢十夜」有栖川有栖は近ごろ怪夢を見る。火村と彼を次々と不可思議が襲う夢だ。今夜もきっと…。「高原のフーダニット」弟を手にかけました…美しい高原を朱に染めた双子殺人事件は、一本の電話から始まった。透徹したロジックで犯人に迫る、これぞ本格=フーダニットの陶酔。ミステリ界の名手、初の中編集。(アマゾンより)

この作品も火村シリーズという事で期待しつつ読みました。が、感情移入できないままでした。
トリックが・・・というより、最初から最後まで全然盛り上がらないのです。
小説というと、事件がおき、二転三転し、犯人見つからず、ふとしたキッカケから動き出し、あっと驚くトリックがあって事件解決、という起承転結がありますが、この作品を読む限り、単に謎解きがどうなるか?だけに主眼が置かれてるようで、全然感情移入できませんでした。
もう火村とアリスの関係がわかってる人には省略、後は謎解きだけが残る・・・という感じでしょうか。
古くなりますが、有栖川有栖の場合、「月光ゲーム」や「孤島パズル」のように、次から次へと謎めいた事がおき、驚きの結末が来るのを楽しみに皆読んでると思います。
最近の有栖川作品は確かに「新境地」が多いのですが、どうも面白くないのです。
原点に返ったわくわくする作品を読みたいんですが。

読みやすさ度 
ビックリ度  ★★
お買い得度  


高原のフーダニット


有栖川有栖の傑作といえばこちら。必読です。

月光ゲーム

孤島パズル


粘膜シリーズ最新作「粘膜戦士」を読む

伊坂幸太郎をして「天才」と言わしめた飴村行の粘膜シリーズ最新作「粘膜戦士」です。今回もグロさは相変わらずです。

占領下の東南アジアの小国ナムールで、大佐から究極の命令を下された軍曹。抗日ゲリラ、ルミン・シルタと交戦中、重傷を負い人体改造された帰還兵。複雑な家庭事情を抱え想像を絶する悲劇に見舞われる爬虫人好きの無垢な少年。陸軍省の機密書類を盗み出そうとして捕らわれた2人の抗日分子。そして安住の地を求めて山奥に辿り着いた脱走兵…。戦時下で起こる不可思議な事件。目眩く謎と恐怖が迫る、奇跡のミステリ・ホラー。(アマゾンより)

今回は短編集ですが、そのグロさ、嫌らしさは変わりません。また、ユニークさも変わりません。拷問、エロ、ヘルビノ、○○やん(まさかの登場)と、様々なキャラもそのまんまです。
ただ、今回は短編集なせいか、一話一話が短く、比較的あっさりした話で終わってます。テーマも結構違うので好き嫌いが分かれそうですね。
僕は過去の「粘膜蜥蜴」あたりが一番変わってて好きでしたが、この作品も最後にまさかのキャラが登場してサプライズまでありました。ずっと読んでる人はニヤニヤする事でしょう。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★
お買い得度  ★★★



粘膜戦士

過去の粘膜シリーズ

粘膜兄弟


粘膜人間



伊坂幸太郎「モダンタイムス」を読む

伊坂幸太郎の文体は好きです。アッサリしていながらユーモアがあり、読者を置いてけぼりにしそうなそっけなさ。だけどウィットにとんでます。今回は「モダンタイムス」です。

恐妻家のシステムエンジニア・渡辺拓海が請け負った仕事は、ある出会い系サイトの仕様変更だった。けれどもそのプログラムには不明な点が多く、発注元すら分からない。そんな中、プロジェクトメンバーの上司や同僚のもとを次々に不幸が襲う。彼らは皆、ある複数のキーワードを同時に検索していたのだった。(アマゾンより)

どうも僕は伊坂幸太郎と相性が良くないのかも・・?と思い出してきました。面白いんですが、どうしても結末が好きになれない。この作品は特に上下巻なので、後半長く感じてしまい最後は息切れしました。出だしが面白いなあと思ったので余計に残念でした。
この作品もそうですが、明確な結末がないんですよね。アッサリしてて、そういう小説と言われればそれまでですが、上下巻読んでこういう結末だとどうも納得できない。ただ面白くない訳じゃなく、独特の言い回しとテンポはいいので女性にはウケると覆います。
でも僕は伊坂作品なら殺し屋シリーズの「グラスホッパー」「マリアビートル」が好きですね。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★
お買い得度  ★★






神山健介がモテすぎ?「早春の化石」

柴田哲孝の、私立探偵神山健介シリーズ「早春の化石」の文庫化です。ハードボイルドミステリーという分野ですね。

姉の遺体を捜してほしい―。福島の私立探偵・神山健介は東京から来たモデル・中嶋佳子から奇妙な依頼を受けた。二年前、ストーカーが双子の姉を拉致。だが犯人は自殺し、姉はそのまま行方不明になっていた。手掛かりは「土の中から姉の声が聞こえる」という佳子の曖昧な話だけなのだが……。やがて死んだ犯人の過去を追ううちに、戦前の満州から続く名家の闇が浮上する!(アマゾンより)

前の作品である「渇いた夏」でも結構モテてましたが、もう神山健介がモテすぎです。ハードボイルドはだいたいそうですが、ここまで女性にモテる主人公はちょっといないでしょうか。
内容は非常にオーソドックスなミステリで、結末もそんなに驚くべきものはありませんが、とにかくテンポがいいのであっという間に読めます。いくら姉妹でも死んだ相手がどこに埋められてるか声が聞こえるか?などとヤボな事は言いませんが、一気に結末まで読ませてくれます。
ただ、あまりにこのシリーズはハードボイルドに振りすぎな気がして鼻についてきた事も事実。ファション、音楽、クルマ・・・恐らく著者の趣味なんでしょうが、描写が多すぎかなあと僕は思ってしまいました。
もうこのシリーズはいいかな。
ぜひ有賀雄二郎シリーズの方を読みたい。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★
お買い得度  ★★★



こっちは文句無くオススメ
KAPPA
TENGU
RYU




お得な東川篤哉のいきなり文庫「中途半端な密室」

いきなり文庫、しかも500円という安さで登場した東川篤哉の最新文庫「中途半端な密室」です。デビュー作も含む5作の短編集です。

テニスコートで、ナイフで刺された男の死体が発見された。コートには内側から鍵が掛かり、周囲には高さ四メートルの金網が。犯人が内側から鍵をかけ、わざわざ金網をよじのぼって逃げた!?そんなバカな!不可解な事件の真相を、名探偵・十川一人が鮮やかに解明する。(表題作)謎解きの楽しさとゆるーいユーモアがたっぷり詰め込まれた、デビュー作を含む初期傑作五編(アマゾンより)。

昔は短編集のミステリは嫌われてましたが、最近は逆に短編ブームのようですね。この作品は東川篤哉のデビュー作を含む短編集ですが、なかなか充実していてビックリしました。
内容(特に表題作の「中途半端な密室」)は東川篤哉らしい、ユーモアを含む本格ミステリで、一見ふざけてるようですが骨子はしっかりしたミステリに仕上がってます。
最近の東川作品はちょっとユーモアがきつすぎ・・・という方に読んでいただきたいかもしれません。まだ若い分か、ミステリ色が強いあっさりした仕上がりになっています。
しかも短編なので、すこしずつ読めます。500円ならお買い得ですね。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★★
お買い得度  ★★★★





なかなか読めなかった「ジウ」を読む

ストロベリーナイト」もドラマ化され、今や売れっ子となった誉田哲也の出世作の一つ「ジウ」です。ずっと気になっていた作品でようやく読了、そのスピード感はさすが誉田哲也です。

都内の住宅地で人質篭城事件が発生した。所轄署や機動隊とともに警視庁捜査一課特殊犯捜査係が出動し、門倉美咲巡査は差し入れ役として犯人のもとへ向かうが―!?篭城事件と未解決の児童誘拐事件を結ぶ少年、その背後で蠢動する巨大な事件とは?ハイスピード、未會有のスケールで描く新・警察小説。(アマゾンより)

誉田哲也の「ストロベリーナイト」と言えば、そのグロさでも有名ですが、このジウも結構グロいです。といっても、バンバン死体が・・・という訳ではありません。ところどころの描写でグロい所が出てくる程度ですが。
今回の主役は対照的な女性刑事2名です。方や女性っぽさが特徴の門倉美咲、方や男以上にクレバーな伊崎基子。
全く違う方向から事件に向かい合う二人ですが、ある事件で大きな差が・・・。しかも主犯と思われる少年は全く行方が分からない。圧倒的なスピード感で話しは進みます。
ネタバレですが、その主犯だと思われる少年の名前が「ジウ」。タイトルになっています。
さて、ジウの正体は・・?誉田哲也のスピード感を存分に味わって下さい。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★★
お買い得度  ★★★



誉田哲也の出世作「ストロベリーナイト」はこちら



柴田哲孝 私立探偵・神山健介シリーズ「渇いた夏」

読みやすいんですよね。柴田哲孝。今回はよりハードボイルド色が強くなってます。神山健介シリーズ「渇いた夏」です。

死の直前、伯父が遺したものは何を語るのか。亡き母の妖艶な写真、殺人事件の調査記録、古い鍵、そして謎の女…。福島県西郷村の家を相続した私立探偵・神山健介は、伯父の死の真相を探る。母とともに少年時代を過ごした懐かしい地。だが、その美しい思い出すらも二〇年前に端を発した一連の事件へと繋がっていた!?焦熱の太陽が暴く、人間の愛と狂気。(アマゾンより)

私立探偵事務所を退職し、地元に戻って個人で探偵を始める神山健介ですが、これがモテる(笑)。話と関係ないですが、様々な女性からアプローチを受けながら事件を紐解いていきます。ミステリとは違い、いわゆるハードボイルドモノですね。
今回は神山健介のおいたちにかかわる謎がメインですが、ラストまで一気に読ませる筆力は健在です。
柴田哲孝のいいところは、非常にオーソドックスな展開であるという事。伯父と母の仲という大きな謎があり、その前に別の事件が起きます。そして最終的に全てが一気に解決されるときはスカっとします。
登場人物も多くないので非常に読みやすい(笑)。
TENGU」や「KAPPA」のようなワクワク感はありませんが、オススメです。

読みやすさ度 ★★★
ビックリ度  ★★
お買い得度  ★★★



渇いた夏

柴田哲孝の本(オススメ順)
KAPPA
TENGU
RYU


東野圭吾の新境地「ナミヤ雑貨店」の奇蹟

東野圭吾の作品というだけですごいトリックを期待してしまいますが、この小説は「こんな世界も書けるのか」と驚かされます。発売されたばかりの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」です。

あらゆる悩みの相談に乗る、不思議な雑貨店。しかしその正体は……。物語が完結するとき、人知を超えた真実が明らかになる。すべての人に捧げる、心ふるわす物語(アマゾンより)。

東野圭吾のすごさは、簡潔な文章なのに、物語の情景が手に取るように頭に浮かんでくる事でしょう。俗に言う読みやすさですが、様々な形容詞を羅列する作家(それを筆力と勘違いしてる)もいますが、簡単な会話と文章で画像を見ているような映像と心理状況が浮かんできます。
今回の作品は殺人は起きず、ある一軒の悩み相談をしてくれる雑貨店を中心に展開します。最初の章で概要が説明され、一見関係ない物語が続き、最後に近づくにつれて徐々に繋がりが見えてきて盛り上がり、最後に全てが繋がるラストが待っています。連作短編の王道ですね。
悩みへの答えが非常に奥深く、「多くの相談者は答えを聞く前に自分で答えを持っている」というあたりは納得です。また、答えを生かすも殺すも相談者の生き方次第という所も。この小説を読んでる人へのメッセージのようですね。
ただ、ちょっと反則気味な人生相談の答えに少し疑問を感じずにはいれませんでしたが(笑)。

読みやすさ度 ★★★★★
ビックリ度  ★★★
お買い得度  ★★★





想定外の面白さ「三匹のおっさん」

単行本の時から買おうと迷ってたんですが、このたび文庫化されたので即買いした「三匹のおっさん」です。おっさんによる勧善懲悪ものだとはわかってましたし、安心してスカッと読める小説なんだろうなあと想像してましたが、想定外の面白さでした。

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか、とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械いじりの達人の頭脳派・ノリ。ご近所に潜む悪を三匹が斬る!その活躍はやがてキヨの孫・祐希やノリの愛娘・早苗にも影響を与え…。痛快活劇シリーズ始動。(アマゾンより)

タイトルと装丁を見て、要するに悪人を三匹のおじさん達が懲らしめるだけかと思ってました。安心して読める(人が殺されたりしない)小説なんだろうなと。ところが予想をいい意味で裏切られました。
還暦近くのおっさん三人組が、周囲のジジイ扱いを嫌い、本業の傍らご町内の自警団を結成します。剣道師範のキヨさん、柔道の猛者シゲさんという武闘派と、機械いじり大好き情報収集担当の頭脳派ノリさんという圧倒的な個性の三人組です。そこに、キヨさんの孫である祐希と、ノリさんの娘の早苗という高校生が出て来ます。この二人とおっさん達の絡みがとてもいい。一見、おっさん(おじいさん?)と孫世代とのギャップが溝を深めるんですが、事件を解決するにつれてお互い世代の差を認識しながらギャップが埋まっていき、お互いを思いやる気持ちに変わっていく。そんな所がとても読み手の心を暖かくしてくれます。
一見軽くてチャラっぽいけど、実は芯が通った一本気な祐希がいいです。
幅広い世代に読んで欲しい傑作ですね。

読みやすさ度 ★★★★★
お買い得度  ★★★★★



三匹のおっさん